第6回 OpenFOAM®User Conference 2018レポート
第6回OpenFOAM® User Conference 2018は2018年10月23日から25日まで、ドイツ、ハンブルグで開催された。昨年と同規模の会となり、関係者を含め200名弱のOpenFOAM®開発者、企業ユーザー、研究大学機関などの参加により各分野の講演が行われた。一日目
- 基調講演
- インペリアルカレッジ イッサ教授 PISOアルゴリズム開発経緯から現在の取り組みなど、原子炉冷却の事例などを織り交ぜながらの格調高い内容だった。
- VWグローバル研 ポールベンスラー博士 VWグループの研究拠点役割の紹介から、OpenFOAM®の利用メリット、Adjoint法の多数の事例など
- 空力セッション
- アウディ スライディングメッシュ=AMIを利用した回転するタイヤの空力効果のシミュレーションへの取り組み
- メルセデスベンツ VOFとラグラジアン粒子ソルバをカップリングさせ、サイドミラーの雨粒挙動のシミュレーションへの取り組み
- フォンカルマン研 圧力損失を減らすためのノードベースのアジョイントトポロジー最適化事例
- ESI snappyHexMeshの新開発報告。方向指定精細化、メッシュ生成不適合部分の除去、漏れ箇所検索の後処理ツールなど
- ENGYS HELYX-ADJOINT形状最適化の最新技術情報と事例紹介
- ESKISEHIR TECHNICAL UNIVERSITY 高速キャビティ流れのフラップとスポイラーの空力影響
- ESI キャビン騒音検証のためのOpenFOAM®とVA-ONEによる取り組み
- マーレ 温度管理シミュレーションのOpenFOAM®ベースのワークフローの自動化
- 混相流セッション
- ストロンミング、DCS、DLRドイツ航空局、ダルムステッド大、ベルリン大、シュトゥットガルト大など
- 基調講演
- OBE&マシュークロス ルイス氏 F1カーなどの解析業務、エンジニアリングを通してCFDビジネスのあり方に対する見識のある考察
- ESI フレッド氏 OpenFOAM®商標保有社としてのOpenFOAM®のガバメントの示唆、Steeringコミティ、Technicalコミティによる運営形態を構築について
併せて、新機能紹介と今後の開発について
- 火災、原子力、化学セッション
- 古河電機研(ハンガリー) 化学反応炉の解析事例
FMグローバル、フォンカルマン研など
- 環境セッション
- CFD SOFTWERE E+F 地形データの自動メッシングと解析例
- SOBRIETY 降雪シミュレーションへの取り組み
- FRAUNHOFER IWES 風力発電ファームのサイトアセスメント
IHカンタブリア、レオロジック
- HPCセッション
- シネカ ParaView-Catalyst、大規模結果の出力軽量化可視化ツール紹介、カールスルエ研、ストイアノブスキィ研、WIKKI
- ミュニッヒ工科大 マルチフィジックスのための連成ソケット、preCICEの紹介
- スワンシ大学 非線形構造解析ソルバexplicitSolidDynamics開発経緯
- ブロンシュベッグ大 OpenFOAM®とAbaqusのソケットベース連成事例紹介
- プロセス、溶融セッション
- ナバスト 高温溶融炉の解析事例を通して数千度でのソルバ検証
- モンテュペ 鋳造ソルバの開発と解析事例紹介
- オーバーセットメッシュセッション
- HPC研、ダルムシュタット大ほか
アプリケーションベストプラクティス、アジョイント最適化セッションESIのVisual-CFD/GUI、Scilabセッション
感想
ESI-OpenCFDはOne OpenFOAM®を目指し、開発、運営における統治を考え、運営委員会、技術委員会を設置した。しかし、CFD DIRECTなどは参画しておらず、道半ばの感はある。ESIアプリケーションとしてはオーバーセットメッシュ、流体騒音ソルバVA-ONE、Visual-CFDなどが紹介された。また、昨年からESIグループの一員になったオープンソースの数値計算、信号処理、数式処理などのツールScilab(サイラボ)のセッションも行われた。基調講演ではPISOアルゴリズム開発で有名なIssa教授の講演、TOTALSIMのマシュー氏のCFDビジネスへの見識のある講演が興味深った。自動車系の数社の発表、DCS、ENGYS、FM GLOBAL、CFD SOFTWARE E+F、NAVASTO, MONTUPETなどサードパーティの事例も面白いものだった。学術系ツールでは、CINECAのParaView-Catalyst, Munich大のpreCICE、SWANSEA大のexplicitSolidDynamicsソルバ、STROMNINGのisoAdvector VOF法、SOBRIETYの降雪付着ソルバなどの先駆的発表も行われた。また、地味だが、MONTUPETの鋳造シミュレーションの取り組みも興味深いものだった。後記
欧米だけでなく、ブラジル、メキシコ、アジアからの参加も多数あった中、日本からは4名の参加で寂寥感はあったが、今後の研究、講演発表参加に期待したい。OpenFOAM®の行方はひとつの道に集約するのかは分からないが、連続体/流体解析分野でのプラットフォームとしての位置付けは確立した感があり、CAEソリューションズとしても様々な場面で貢献できればと思う。イベントの様子

関連製品


