「解析計算の効率化テクニック」の話
コラムをご覧の多くの方は、設計案の絞り込み、対策検討に、多くの計算を実施されていると思います。
効率よく計算するため、メッシュの粗密・対象部品の絞り込み・形状簡略化・モデル規模縮小などの方法でモデル化を工夫されていると思います。
しかし下記理由により、全体モデルで解析している方も少なくないと思います。
① 荷重あるいは形状が、厳密に対称ではない
② 形状が回転コピーの状態だが、形状が対称ではない(例:扇風機の羽など)
③ 形状は対称で荷重の大きさは同じだが、方向が反対(例:隅力など)
④ 解析ソフトウェアにメニューがない
全部スッキリ解決とまでは行きませんが対処できる場合もありますので、ご紹介します。
【 テーマ:解析計算の効率化テクニック 】
コラムをご覧の多くの方は、計算効率化のため、モデル化を工夫されていると思います。
代表的な方法として、下記があります。
・【 メッシュの粗密 】必要な部分のメッシュを細分化し、全体の要素数を抑える
・【 対象部品の絞り込み 】アセンブリの場合、着目結果に影響する部品以外を除外
・【 形状簡略化 】フィレット、穴など細かい形状を省略
・【 モデル規模縮小 】(対称性のある形状の場合)対称性を利用する
「対称」に関しては、多くの方が利用されていると思います。
しかし下記理由により、全体モデルで解析している方も少なくないと思います。
① 荷重あるいは形状が、厳密に対称ではない
② 形状が回転コピーの状態だが、形状が対称ではない(例:扇風機の羽など)
③ 形状は対称で荷重の大きさは同じだが、方向が反対(例:隅力など)
④ 解析ソフトウェアにメニューがない
<ファンの解析>
全部スッキリ解決とまでは行きませんが、紹介する方法により、対処できる場合があります。
① 剛性、形状や条件など、厳しい方を選択
②「周期対称」を使用
③「反対称」を使用
④ 手動で設定
各々詳しく見ていきます。
①[厳しい方を選択]について: 応力集中する、剛性が弱いなど厳しくなる側で検討します。
解析にて厳しい条件で検討し設計を進めることにより、実機では安全側になります。
但し、どの部分で検討するか判断のため、製品挙動の知見が必要になる場合があります。
②[周期対称]について: 解析ソフトウェアにメニューが無いと、設定はほぼ無理です。
計算処理方法が分かっていても、それを再現する機能がない、あるいは機能があっても、手動での設定に手間暇が多くかかります。
一部分だけ切り出した際の両端面には、下記条件が揃っている必要があります。
・両面の形状は同じ(平面の必要なし。但し、解析ソフトウェアにより制限あり)
・変形状態が同じ
手動でその状況を再現する設定が必要です。
筆者個人の意見としては、その手間暇をかけるのであれば、全体で解析し、あとはコンピューターの力に頼った方が、効率良く結果が得られると思います。
計算時間がかかったとしても、その間他の業務に時間を使うことができます。
あるいは夜間に計算を実施し、翌日結果を確認する方法もあります。
③、④[対称、反対称]について: 解析ソフトウェアにメニューが無いため、あきらめている方もいらっしゃると思います。
安心してください、解析できますよ。
但し、ここではソリッド要素を対象とします。シェルや梁要素は、自由度の関係で多少複雑です。
対称、反対称ともに、解析ソフトウェアにそのメニューが無くても、拘束条件の各方向設定で可能です。
「対称」は対称面をミラーとして、両側が同じ動きになります。
「反対称」は、「対称」と動きが逆になります。
モデルの挙動をイメージするため、対称面上にある点を考えます。
「対称条件」:対称面上の点は、対称面に対し面直方向に動くことができませんが、その他の方向は自由に動けます。
「反対称」:その名の通り対称の逆です。面直方向には自由に動けますが、その他の方向は動けません。
対称・反対称を、拘束の各方向成分にて設定し計算した画像・動画を示します。
< 対称条件、反対称条件 >
< 全体および1/4モデル(厚み方向:対称条件、幅方向:反対称条件)>
「周期対称」「対称」「反対称」の対称条件は、応力解析に適用できますが、振動解析には注意が必要です。得られた結果は、周期対称、対称もしくは反対称のものしかなく、それ以外の結果がないことを理解した上で、評価する必要があります。
以上で、「解析計算の効率化テクニック」に関する話は終了です。
最後に、コラムの結びとして、「知行合一(ちこうごういつ)」という言葉をご存じでしょうか。
下記は筆者の拡大解釈かも知れませんが、あらかじめご了承ください。
この言葉は「知ることと実行することとは、本来二つには分けられない」とする陽明学の思想のひとつです。モノづくりに携わっている方々は、CAE検討による「知」を元に、設計・製造にて具現化する「行」を実施されています。まさしく「知行合一」を実践されていると思います。
あいにく弊社には、物を作る環境はありません。しかしCAEという「知」に関し、皆様のお手伝いができると思っております。
弊社では、設計者から解析専任・研究開発向けまで、幅広い解析ソフトウェアの取扱い、各種セミナー、トレーニングを提供しています。
解析に関するお悩みがあれば、ぜひ弊社にお気軽にご相談ください。