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Technical information (Column)技術情報(解析コラム)

2026.01.20

液浸冷却の流体解析

  1. 1.  液浸冷却とは

  2.  最近話題のDX(デジタルトランスフォーメーション)やAIの発達によりデータセンタ需要はますます盛んになっております。そういった高負荷な計算を行うにあたって避けて通れないのがコンピュータの発熱問題です。
     「半導体回路部品の集積度は1年で2倍になるであろう」というムーアの法則はもはや成り立たたないのか?という議論がされている昨今ですが、AMDが2nmプロセス(水素原子20個分くらい)の半導体製造を発表したのは記憶に新しいと思います。また、半導体の3次元積層技術などCPUの回路の小型化、高密度化はまだまだ進展していきそうです。お察しのとおりCPUの小型化、高密度化が進むほど発熱量は爆発的に増加するわけです。
     そんななかでCPUの冷却は空冷、水冷の選択肢があります。空冷式はCPUにヒートシンクを取り付けファンで冷やす方式で、水冷式はCPUにウォーターブロックと呼ばれるパッドを取り付け、パッドに接続されたチューブを通じてラジエータに冷却液を循環させる熱交換によって冷やす方式です。どちらもメリット、デメリットがあり、空冷ではコストは安いのですが冷却性能が水冷より低く、水冷では冷却性能は高いのですがコストが高く、また冷却液の液漏れ事故などのデメリットがあります。
     私の思い出ですが、5年ほど前に、Linuxの生みの親であるリーナス・トーバルズ氏の「最近、使用しているPCはAMD Thread Ripperであり、それを空冷で運用するので十分」という発言を受け、ドでかいCPU空冷ファンをとりつけAMD Thread Ripper搭載のPCを組んだことがありますが、実際に運用するとフルコアの計算で頻繁に落ちる事態になったことがありました。やはりデータセンタなどの高性能のCPUには水冷がどうしても必要なのかもしれません。
     ところで皆さんは超純水(蒸留水)が絶縁だという話をどこかで聞いたことがあるかもしれません(実際はわずかに電離しているわけですが)。私はそれを聞いたときに「超純水にマザーボード丸ごと浸けて、それを循環させ続ければものすごく冷却できるのでは?」と思いました。そして実際世の中にはそのような冷却方法が確立されております!それが“液浸冷却”と呼ばれる技術です。
     液浸冷却は、冷却液(実際は絶縁性のオイルなどです)で満たしたラックにサーバを直接浸漬させ冷却液をラジエータに循環させ熱交換により冷却する仕組みです。水冷より冷却効率も高くそもそも冷却液に漬かっているので故障しにくくコストも低いというメリットがあります。
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  1. 2. 液浸冷却の解析

  2.  液浸冷却は実際どれくらいの効果があるのでしょうか?それをCAE技術によって解析していきます。
     使用する解析ソフトウェアはOpenFOAM®をENGYS社が独自に機能強化し、さらにユーザフレンドリなGUIも搭載したソフトウェアであるHELYXを使用していきます。
     PCの解析モデルについてはありがたいことにHELYXに付属している例題から拝借しました(図1)。こちらの解析モデルは空冷のモデルになっておりまして、図中手前の青丸が引き込みファンを模擬した空気の流入口で、図中の銅色のCPUに載せられた銀色のヒートシンクを冷やしながら空気が通過し赤い3つの穴が連なる流出口へと流れる解析になります。
     
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  2.  一方で、液浸冷却を解析するモデルを図2のものとしました。こちらは図1からヒートシンクを取り除きCPUを冷媒で直接冷やすようにしました。

  1.  下の表1がそれぞれの解析条件になります。液浸冷却の冷媒はHELYXのライブラリから超純水を想定して水を選択しました。超純水もわずかに電離しているわけですが、水没冷却という基盤を薄い皮膜で覆い水に直接浸ける技術も研究されていますので今回は水ということでお許しください。また基盤を傷つけぬよう0.02m/sの静かな流速で流入させています。CPUの発熱量は10Wとかなり低い値ですが、書類作成など普段使いの想定ということでお願い致します。

  1. 3. 解析結果

  1.  それでは解析結果になります。下のグラフ1より、空冷ではCPUの平均温度が約70℃で収束するのに対し液浸冷却では約35℃を保っていることがわかります。
  1.  下の図3はマザーボード、ヒートシンク、チップの収束後の温度を温度コンタで表示したもので、図4はチップの中央から切った流体領域の垂直断面図をプラスしたものです。両方とも上が空冷、下が液浸冷却の解析結果となります。どちらも液浸冷却で効率よく冷やされている様子がわかります。

 このように新しい技術であってもシミュレーション解析によって具体的結果を予測することが出来ました。


  1.  弊社では解析設定のサポートからハードウェア、ソフトウェアのご提案から教育までトータルに支援できますので、課題に感じている事がございましたら何なりとお申し付けください。ご連絡お待ちしております。