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2019.01.07

オープンソースCFDの歴史と展望

1989年、ヘンリー・G・ウェラーとその友⼈により開発が始まったオブジェクト指向型⾔語C++クラスライブラリによる流体解析プログラムは現在世界各地の連続体/流体シミュレーションを必要とする研究者および製品開発に携わる技術者のオープンソースCFDプラットフォームに育って来た。この間、初期段階ではインペリアルカレッジ他のソルバ、モデル研究開発ツールとして、その⾻格が出来上がり、その後、数年の商⽤コード化により、企業での利⽤に鍛えられるソフトウェアのベースが構築され、2004年暮れからのオープンソース化により爆発的にユーザー層の拡⼤が図られて来た。また、それに伴い、様々なソルバ、アプリの開発が進められた。オープンソース化されてから暫くは研究コードの置き換えや⼀部の信奉者による利⽤に限られていたが、2008年からの世界経済の落ち込みにより、企業トップによる経費削減の期待に合致するものとして、各企業での既設商⽤CFDの代替えツールとしての検証、利⽤が積極的 に⾏われ始めた。更に、HPC, クラウド環境が整備されると、その移殖性、ライセンス拘束のなさ、並列計算効率などによりユーザーが更に増加した。ここまではどちらかというと流体解析のプロが扱うものだったが、HELYX®に代表されるWindowsベースもあるGUIシステムが出現すると設計部⾨にも展開できる素地ができつつある。その機能強化された⾼精度メッシャ、収束性の⾼いソルバにより、GUIを簡易化し、製品毎の設計に適合した機能に限定したウィザード、ダイアログによる設計現場のパラメータスタディツールに仕⽴て上げることもできるようになって来ている。

それでは、何故このようにOpenFOAM®が発展を遂げて来たかの技術背景と今後の展望を次に述べたいと思う。

技術背景

OpenFOAM® Foundation、CFD Direct社 開発元と元祖メンバのサポート会社、世界各地で啓蒙的トレーニングを開催、また、説明書、クラウドベースでの利⽤環境も整備、最新バージョンはOpenFOAM® v6
ESI-OpenCFD社 オープンソース化した企業OpenCFD社をESI社が買収し、OpenFOAM®の登録商標を所有、毎年、OpenFOAM® User Conferenceをドイツと⽶国で開催。昨年からはOne OpenFOAM®を標榜し開発、検証などの⼀元化を図っている、最新バージョンはOpenFOAM® v1812
foam-extend オープンソース化した時にスピンアウトしたProf. Hrvoje Jasakらによる、アカデミック的要素を持ち、AMGソルバ、FSIなどの研究コードを開発、最新バージョンはfoam-extend-4.x
オープンCAE学会 会員数200名超のオープンソースCAEの学術団体、⽇本各地でOpenFOAM®のトレーニング、フォーラム、シンポジウムを開催、マニュアルの和訳なども⾏っている
HELYX-OS, DEXCS, X-Simほか OpenFOAM®⽤のGUI、無料でダウンロード利⽤ができる、その他サードパーティが商⽤版forkをリリース
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ライセンス形態、GNU/GPL
Linuxに代表されるようなオープンソースのライセンス形態。商⽤ソフトウェアのDRMに対して、著作者への尊敬は継承するが、書き換え、編集、再配布は⾃由に⾏えるようにしたライセンス形態。但し、継承したプログラムには必ずオープンソースを付属することが約束事となっている。

並列計算ツールMPI
複数のCPUを使⽤して並列計算処理をするためのCPU間通信⽅式


オブジェクト指向型⾔語C++
1980年代より、プログラム開発の効率化、保守性、再利⽤がスムーズにできるように開発されたモジュール化が可能なプログラム⾔語


OpenFOAM®システム
数学記号から、離散化、ソルバ、ユーティリティ、アプリケーションまで有限体積法の連続体/流体解析ライブラリ、これにより、新しいソルバ、乱流モデルなどの追加、拡張が容易


バージョン管理とコミュニケーションツールGitHub
プログラム開発に複数の開発者が参加でき、また、プログラム管理、協調作業ができるプログラム開発環境、特に、オープンソースコミュニティには便利なツールである


オープンな可視化ツールParaView
商⽤ポストプロセッサにも匹敵する可視化ツール、ParaViewによりオープンソースCAE/CFDソルバのトータルなアプリケーション開発がスムーズになっているコミュニティ活動


今後の展望
ESI-OpenCFD社は、昨年からOne OpenFOAM®を標榜して、開発、評価、運営を⼀本化する活動を⾏っている。しかし、CFD Direct社, ENGYS社などは加わっておらず、元祖⾊、企業⾊を出して、それぞれ独⾃の開発、活動を⾏っている。オープンソースコミュニティの常だが、⾃由さ故に、統治的なものに権威⾊を感じ忌み嫌い、統⼀化が上⼿く⾏かないことが過去の例を⾒ても多々ある。OpenFOAM®が更に発展して⾏くためには、元祖、本家、各forkベンダーがお互いを尊重し合い、壁を低くし、コミュニケーションできる状況は維持する形が良いのではないかと思う。オープンソースCFDより得た儲けは開発者へ還元できる仕組みも必要だと思う。⼀部の企業、個⼈に富が集中するようなものではないシステムを構築することがオープンソースコミュニティに参加する⼈の共通認識=コアなマインドであって欲しい。
 

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