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Technical information (Column)技術情報(解析コラム)

2026.07.17

山に掘ったトンネルはなぜ崩壊しないのか

― 流体との比較による粒子挙動の不思議

東京から長野に向かう途中、関越トンネルという有名な山岳トンネルを通過する経路があります。
谷川岳周辺は山頂標高が2000m近くあり、トンネルには1000mを超える高さの土砂がのしかかるにも関わらず、山の重さに耐えてトンネルがつぶれてしまわない理由のひとつとして、土砂が粒子という離散的な物質であることが挙げられます。粒子は堆積して固体のように振る舞うこともあれば、雪崩のような流体に似た挙動を示すこともあります。しかし、同じ流動性を示す物質でも、連続体である流体と、離散的な物質である粒子の挙動は大きく異なります。
今回は流体と比較しつつ、離散的な粒子の特徴的な挙動をご紹介します。

小型トンネルモデルにはたらく力の比較
トンネルを模擬したアーチ状の底面を持つ容器を水で満たす場合と、粒子で満たす場合でアーチ状底面に加わる力の大きさを比較しました。容器は横300mm、縦100mm、高さ200mmで、底面は直径100mmの半円凸形状です。

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ここに水を満たした場合、体積は5.6E-3m3であり、荷重は約55Nとなります。容器の高さを大きくするとそれに比例して荷重は大きくなります。一方、同じ重量の粒子で容器を満たした場合は、後述のようにこのような比例関係にはなりません。また、容器底面にはたらく力(鉛直方向の荷重)は場所によって異なり、最大でも6.8E-2N程度、全荷重は1.6E-3Nとなりました。

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このシミュレーションはAspherixを使って行いました。流し入れた粒子の分布は、直径2mm、2.5mm、3mmを等配分で配合し、密度は水で満たした場合の総重量と同程度になるよう決定し(2000kg/m3)、粗視化を行って計算しています。アーチ形状と粒径のサイズ比は実際のトンネルと土砂のスケールとは大きく異なりますが、粒子の特徴的性質はこの例でも確認することが可能です。

粒子が支えあって荷重が分散する
堆積した粒子は、所々に粒子同士が接触し、摩擦力によって支えあっています。そのため粒子にかかる荷重は四方八方に分散し、粒子の総重量がそのまま容器底面に荷重となってはたらくわけではありません。このように荷重が分散してその結果アーチ状の構造を形成する現象はアーチ効果と呼ばれます。
Aspherixによる粒子解析の結果はネットワークチャートを使って表示することができます。ここでは粒子同士にはたらく力を表示しています。全体として底面に近い層ほど粒子間にはたらく力も大きい傾向にありますが、部分的には小さいところもあり、力が分散している様子がわかります。

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積み上げる粒子の量によって圧力は変わらない
このアーチ効果と密接に関連するヤンセン効果というものがあります。粒子と側壁(無限に広い土壌の場合、土壌粒子による壁)との接触部における摩擦力により粒子の荷重が支えられ、上に積み上げる粒子を増やしていくとある一定量で底面にはたらく圧力が飽和し、それ以上増えなくなる現象です。
トンネル上に1000mもの高さの土砂が堆積してもトンネルが崩壊しないのは、アーチ効果、ヤンセン効果によりその重量分がすべてトンネルに作用するわけではないということが理由のひとつとして挙げられます。同じ質量の水で置き換えた場合、トンネルはつぶれてしまうでしょう(山岳トンネルと同じ作りであった場合)。

粒子解析による破壊、詰まり、流動性の予測
粒子解析により、壁面に加わる応力、せん断力を可視化したり、摩耗を計算して粒子による破壊、損耗を予測することができます。また、粉粒体供給機においてはアーチ効果による詰まりが問題となることも多く、粒子の流動性予測にも利用されます。Aspherixは流体との連成が強力で、化学反応や液体、気体、固体粒子など多相流の複雑な相互作用を含む解析が可能で、食品のような身近な製品から、宇宙産業のようなスケールの大きな研究など幅広い分野で利用されています。

粒子、流体、構造物、、、マルチフィジックスの再現のために
今回の例では、流体と粒子の簡単な比較を行いましたが、粒子、流体、構造物を含む解析が必要な場合もあります。流体解析ソフトの中には、粒子を扱うことができるものもあれば、Aspherixのように流体と連成のできる粒子解析ソフトもあります。知りたい現象の再現やコストを考慮して、どのようなツールを用いてどのような解析を行うことが最適か、判断が難しいこともあるかもしれません。

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